ちょっとしたヒント
- 1時間早く、明かりを落として。
- 眠る前に、明日の心配を書き出して。
- あたたかいシャワーを浴びて、そのあと体を冷まして。
夜も更けて、あなたは骨の髄まで疲れている。なんとかしようとずっと自分に約束してきた、あの種の疲れ。それでベッドに入り、明かりを消すと、脳はまさにその瞬間を選んで、すっかり目を覚ますのです。今日の午後の会話。明日のリスト。2014年に言ってしまったこと。横たわったまま、これからどれだけ少ない睡眠時間になるかを計算する。それがもちろん、目を覚ましたままでいる、それ自体の理由になるのです。
もしこれに覚えがあるなら、知っておく価値のあることがあります。たいてい問題は、明かりを消したその瞬間ではありません。その前の1時間にあるすべてなのです。
睡眠はスイッチではありません。着陸態勢に入る飛行機に、もっと近いのです。降下、ゆるやかな下げ、滑走路が必要です。明るい画面と忙しい心からまっすぐ消灯へ向かうのは、体に、空から落ちてその場でぴたりと止まれ、と求めているようなもの。たいていの夜、それはできません。クールダウンの習慣は、ただの滑走路です。眠る前に、静かで、暗めで、気楽な時間をちょっとした一区切り作っておく。そうすれば、頭が枕につくころには、体はもう知らせを受け取っているのです。
眠る前の1時間は、実際に何をしているのか
就寝が近づくと、あなたの内側で二つのことが起きていて、良い習慣はその両方とともにはたらきます。
ひとつめは、体内時計。あなたの体は、いつ眠気を感じるかなどを決める、おおよそ24時間のリズムで動いています。その時計は、光と規則正しさから、いちばん強い手がかりを受け取ります。夜遅くの明るい光、とくにスマホやタブレットから出るものは、脳にまだ昼間だと告げて、眠りへ向かわせるホルモン、メラトニンを抑えます。毎日てんでばらばらの時刻に寝起きしていると、時計は信頼できるパターンに落ち着くことができません。
ふたつめは、神経系。一日を終えても、体はしばしばまだ少し熱を持っていて、はりつめ、身構え、次のことに備えています。睡眠はその逆を必要とします。あなたのしくみが「休む」モードへギアを落とすことを。その切りかえは、命じてできるものではありません。落ち着こうと決めて、すぐに落ち着けるわけではない。でも、それをそっと誘うことはできます。明かりを落とし、体をゆるめ、脳に新しい問題をかみしめさせるのをやめる。
クールダウンの習慣は、この両方に助走をつける方法です。明かりを落として、時計がメラトニンを出しはじめるようにする。ペースを落として、神経系がついてこられるようにする。どれも大げさなことはありません。要は、わざと退屈にしてあるのです。
自分のものを作る
ただひとつ正しい習慣というものはなく、長いものもいりません。たいていの睡眠専門家は、30〜60分くらいのクールダウンの時間を自分に与えることをすすめます。中身そのものより、たいていの夜、だいたい同じやさしいことを、だいたい同じ順番でやる、という事実のほうが大事です。くりかえしが、その習慣を合図として読むよう体に教えてくれるのです。
まずはこれを枠にして、それから自分のものにしましょう。
- 就寝時刻だけでなく、やわらかい着地の時刻を決める。 明かりを消すときだけでなく、クールダウンが始まる時刻を決めます。11時に眠っていたいなら、滑走路は10時ごろに始まる。その早めの時刻を、本当の約束として扱いましょう。
- 世界を暗くする。 天井の明かりを消す。ランプを1つか2つ使う。低い光は、夜が来たと時計に告げます。できるいちばんシンプルな変化のひとつです。
- 明るい画面から離れる。 これがむずかしいところで、その価値があります。最後の1時間は、スマホ、タブレット、ノートパソコンをしまうようにしてみましょう。それが無理に思えるなら、最後の20分から始めて、そこから広げて。光があなたを覚醒させたままにし、中身(ニュース、メッセージ、終わらないフィード)が、まさに電源を落としてほしいときに、心のスイッチを入れたままにするのです。
- 本当に好きな、静かなことをする。 紙の本を数ページ読む。やさしくストレッチする。ゆっくりした音楽や、前に聞いたことのある落ち着いたポッドキャストを聞く。あたたかいシャワーやお風呂に入る。小さなものを一つ片づける。活動そのものより、気楽で、少し退屈であることのほうが大事です。
- 頭の中を紙に出す。 静かになったとたんに心が走りはじめがちなら、ベッドのそばにノートを置いておきましょう。横になる前に、明日の心配ごとややることを書き出します。それを解決しているのではありません。脳に、もう抱えていなくていいと告げているのです。書いてあって、朝にはそこにあるのですから。
これで全部そろった習慣で、ぜんぶやる必要はありません。一週間で投げ出す完璧な10ステップの儀式より、安定した順番の3つの落ち着くことのほうが勝ります。
実際にはどんな感じか
抽象的な助言は、うなずくのは簡単で、使うのはむずかしいもの。だから、具体的な一例を。たとえば11時に眠っていたいとします。10時に、食器を片づけて、台所と天井の明かりを消し、ランプを1つだけ残します。スマホを、ベッドから手の届かないよう、部屋の反対側、できれば別の部屋でまるごと充電につなぎます。10分か15分、手のかからない何かに使う。あつあつのシャワー、楽なストレッチをいくつか、スリラーではない小説を一章。ノートに3行書きとめる。明日について心配している二つのことと、それぞれの最初の小さな一歩。それから10時45分ごろ、涼しくて暗い部屋でベッドに入り、目が重くなるまでランプの明かりでもう少し読みます。
その夜に「含まれていない」ものに気づいてください。明るい画面はなし。大きな決断もなし。「リラックスするため」のだらだらスクロールもなし。脳をふたたび立ち上げさせるものは何もない。それが設計のすべてです。最後の1時間を、一日が閉じていくと体にやさしく告げることに費やす。そうすれば消灯が、突然の落下ではなく、ゆるやかな降下の終わりになるのです。
もし暮らしがまるまる1時間を許さないなら、縮めましょう。たいていの夜にやる15分版でも、ちゃんと効きます。明かりを1つ落とし、スマホを置き、落ち着くことを一つやる。長さより、続けることのほうが力になります。
あたたかいお風呂の小わざと、なぜ効くのか
ひとつの小さなことに、思っているより多くの証拠が裏づいています。夕方のあたたかいお風呂やシャワーです。
気休めの決まり文句のように聞こえますが、その下には本物の生理があります。眠りにつくには、体の中心の温度が少し下がる必要があります。あたたかいお風呂は、血液を肌の表面のほうへ引き寄せることで助けるようで、それが体の熱をあとでより手放しやすくし、上がったあとに中心がより速く冷えるのです。いくつかの研究をまとめた研究者たちは、就寝のおよそ1〜2時間前にとったあたたかいお風呂やシャワーが、平均して人々をより速く眠りにつかせるのを助けた、と見いだしました。1〜2時間前であって、入る直前ではありません。あとで冷ます時間が欲しいのです。
だから、あたたかいお風呂は、本当はお風呂についての話ではありません。体が求めている温度の下がりを与えることについての話です。あたたかいシャワーでも効きます。「小さく、ただで、証拠に裏づけられている」に分類しておきましょう。
心が止まらないとき
多くの人にとって、体は応じているのに脳がやめてくれません。明かりは低く、スマホは離れていて、静かになったとたん、考えがどっと押し寄せる。心配、巻き戻し、計画、夜11時に解決する必要のないことを、夜11時に解決したいという突然の衝動。
これが就寝のまさにそのときに起こるのには、理由があります。一日じゅう、あなたは大きな声の考えが背景にとどまるくらい、心を忙しくしています。止まってじっと横になったとたん、ようやくそれらの場所ができて、いっぺんに現れるのです。あなたに何か悪いところがある印ではありません。刺激の多い一日の終わりに、することのない心がするだけのことです。
歯を食いしばるより、いくつかのことのほうが助けになります。
渦が始まってからではなく、横になる前に書きましょう。さっきのノートのステップは、まさにこのためにあります。明日のリストと、いちばんの心配ごとを紙に出すことが、それを下ろしていいと脳に許します。あなたの頭ではない、どこか安全な場所に、ちゃんとしまわれているのですから。
注意に、やさしく休む先を与えましょう。数える、ゆっくりした一息。シーツの感触。落ち着いた、なじみのある音。狙いは、心を無理に空っぽにすることではありません。それは決してうまくいきません。心がかみしめたがる問題のかわりに、やわらかくて退屈な何かを持たせることです。
そして、ある考えが何度も割り込んでくるなら、それと戦わないようにしてみましょう。それに気づいて(「また計画ね」)、言い争うのではなく、通り過ぎていくにまかせるところを思い浮かべて。考えとあらがうと、たいていそれは大きくなります。静かに来ては去るにまかせると、たいていそれは薄れていきます。
ベッドにいるのに、まだ眠れないとき
ここに、はじめて聞くとまちがっているように感じる助言があります。ベッドで目を覚ましたまま15分か20分ほど横になっていて、眠りが来ないなら、起き上がりましょう。
スクロールするためではありません。仕事をするためでもない。起き上がって、別の部屋へ行き、明かりを低く保ったまま、ふたたび眠くなるまで、落ち着いて少し退屈なことをします。それからベッドに戻ります。
これは、よく研究された不眠への取り組み方から来ていて、理屈はシンプルです。あなたの脳は、ベッドが何のためのものかを、いつも静かに学んでいます。何時間もそこに横たわって、いらいらしながら目を冴えさせて過ごすと、ベッドはじわじわと、体が「起きていて不安」と結びつける場所になっていき、それが次の夜をよりつらくします。起き上がることが、その結びつきを断ちます。ベッドの意味をひとつに保つのです。睡眠、と。専門家がベッドを、第二のオフィスや映画館として使うのではなく、睡眠(とセックス)のために取っておくことをすすめるのも、同じ理屈です。
夜中の1時に起き上がるのは、敗北のように感じます。ちがいます。あなたは、直そうとしているそのものを守っているのです。
習慣を静かにだめにする、いくつかのこと
良いクールダウンでさえ、一日の早いうちに台無しにされることがあります。よくある犯人をいくつか。
- まだ効いているカフェイン。 カフェインは、覚醒した感じよりずっと長く、あなたの体に居残ります。睡眠がつらいなら、最後のコーヒーやお茶を午後の早めに引き上げてみて、助けになるか確かめましょう。
- 寝酒。 アルコールは最初は眠気をもたらしますが、夜の後半に睡眠を断片化させるので、より多く目を覚まし、より浅くしか休めなくなります。
- 大きく揺れるスケジュール。 週末に何時間も寝坊するのは最高に気持ちよく、そして日曜の夜には時計を混乱させたままにします。悪い夜のあとでも、起きる時刻をかなり安定させておくことは、できるいちばん強いことのひとつです。
- 暑すぎる、明るすぎる部屋。 涼しくて、暗くて、静かな寝室は、体にあらがうものを少なくします。遮光カーテンやアイマスクは、値段以上にはたらく安あがりな手です。
このどれもが、もっとがんばって眠ろうとすることではない、と気づいてください。がんばることは、確実に裏目に出る唯一のこと。睡眠は、追いかけるのをやめて、それがひとりでにやってくる条件を整えたときに、やってくるのです。
数週間、与えてみて
クールダウンの習慣は、ひとつの習慣で、習慣にも少し滑走路がいります。最初の数晩は、明かりを落としてスマホをしまっても、何も起きていないように感じるかもしれません。それがふつうです。あなたは、いまのパターンを身につけるのに何年もかかったしくみを、訓練し直しているのです。たいていの人は、2週目か3週目のどこかで、ちがいに気づきはじめます。習慣が、やっかいな務めのように感じられなくなって、一日が終わったことを意味するものに感じられはじめるころに。
もしこのすべてを、ほどよく続けて数週間やっても、睡眠がまだひどく壊れているなら、それは歯を食いしばってこらえるより、真剣に受けとめる価値があります。何週間も長引く寝つきや寝つづけの問題、あるいは、あなたの毎日や気分や、ふつうに過ごす力をだめにしているものは、医師が実際に助けられるものです。続く不眠には、良くてよく試された治療があって、いちばん効く第一の選択は薬ではありません。もし眠れなさが、重い不安や、晴れない落ち込みや、あなたを怖がらせる考えと一緒に現れているなら、どうかひとりでやり過ごそうとしないで。専門家か、危機の相談窓口に、なるべく早く手をのばしてください。
クールダウンの習慣は、何もかもを直せはしませんし、そういうものでもありません。それにできるのは、体がずっと静かに求めてきたひとつのことを与えること。ちょっとした時間、ちょっとした暗さ、そして、もう一日を手放しても安全だ、というはっきりした合図を。
出典
- Cleveland Clinic, Rest Easy: 8 Ways To Improve Your Sleep Hygiene
- Cleveland Clinic, Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia (CBT-I): What It Is
- NHS inform, Sleep problems and insomnia self-help guide
- The University of Texas at Austin, Take a Warm Bath 1-2 Hours Before Bedtime to Get Better Sleep, Researchers Find