ちょっとしたヒント
- まず尋ねよう、これは取り消せるか、と。
- 九十パーセントではなく、七十パーセントで決めよう。
- 締め切りを設けて、それを守ろう。
最後に、ある決断の前でかたまったときを思い浮かべてみてほしい。たぶん採用。たぶん予算の判断、あるいは締め切りに押し返すかどうか、あるいはあの気の重いメールを送るかどうか。必要なものの大半は、もうそろっていた。それでも、もっと集めつづけた。ひと晩寝かせ、それからまたひと晩寝かせ、決めることはちっとも楽にならず、ただ遅くなっていった。そのあいだ、あなたが避けていたそれは、そこに座って、静かにあなたのコストになっていた。
今度は、反対を思い浮かべてみてほしい。部屋があなたを見ていて、間違うより沈黙のほうがまずいと感じたから下した、とっさの判断。直感に従って、速く決めて、それが何か月もあなたのコストになった。
どちらも、ちがう服を着た、同じ間違いだ。決断に、まちがった速さを合わせてしまったのだ。育てる価値のあるスキルは、速く決めることでも、もっと慎重に決めることでもない。その瞬間に、これがどちらなのかを知ることだ。
ほとんどの決断を仕分ける、ひとつの問い
どんな長所・短所リストよりも、たくさん仕事をしてくれる、シンプルなテストがある。決める前に、こう尋ねよう。これは、取り消せるか?
ジェフ・ベゾスは、決断を扉になぞらえて説明した。両開きの扉もある。くぐって、見回して、気に入らなければ、また外へ歩いて戻れる。失うものは多くない。ほかに、片開きの扉もある。いったんくぐれば、さっき立っていた場所へ簡単には戻れない。コツの全部は、この二つを同じように扱うのをやめることだ。
取り消せる決断は、すばやく下すべきだ。雑にではなく、ただすばやく。来週、わずかなコストで気が変われるのなら、二週間も思案するのは純粋なムダだ。待てば待つほど、勢いと、行動して初めて得られる、逃した情報の分、コストがかさむ。今いちばん理にかなって見える選択肢を選んで、動こう。決断が生きて動いている一週間からは、それをまたひと月想像しているより、多くを学べる。
取り消せない決断こそが、あなたのゆっくりさに値するものだ。後戻りが本当に難しい、あるいはコストの高いもの。大きな採用。組織再編。退職。こっそり撤回できない、公の約束。これらは、その思案に、第二の意見に、ひと晩の睡眠に値する。ここで忍耐を使おう。それが本当に何かを買ってくれる場所で。
あなたの机を横切るものの大半は、片開きの扉に見せかけた、両開きの扉だ。プレッシャーの下でのわたしたちの本能は、何もかもを取り消せないものとして扱うこと。それこそが、有能な人が遅く、慎重すぎ、行き詰まってしまう、まさにその道だ。だから、取り消せるかという問いを、最初の一手にしよう。それは、三秒ほどで物事全体を見直してくれる。
短い例を。境界線はいつも明らかとはかぎらないから。「チームに週四日制を試してみるべきか」は、とてつもなく大きく聞こえる。恒久的な制度として扱えば、それは片開きの扉で、あなたは苦しむだろう。でも、見直す日付つきの六週間の試行として走らせれば、それは両開きの扉になり、火曜日に決められる。「クライアントに、お別れすると伝えるべきか」は、小さくて速いメッセージに見えるけれど、片開きの扉だ。いったん言えば、言わなかったことにはできない。だからそれは、ゆっくりした下書きと、二人目の読み手に値する。同じ決断、反対の速さ、そして変わったのは、扉がどれだけはっきり見えたかだけだ。仕事の多くは、枠づけ(フレーミング)の中にある。約束を縮めるだけで、片開きの扉を両開きに変えられることはよくある。本格展開ではなく試験運用、永遠ではなくひと月、というふうに。
扉が片開きのときのための、二つめの問い
これは本当に取り消しにくいと決めたとしよう。ゆっくりするのは正しい。でも、ゆっくりは、行き詰まりに固まりうる。だから、正直なゴールラインを持っておくと、助けになる。
役に立つひとつは、大きな規模でうまく決めるリーダーたちから来る。手に入ればよかったと思う情報の、だいたい七十パーセントを持ったら、動く。五十パーセントでは、当て推量だ。でも、九十や百を待ち続ければ、ほぼ確実に待ちすぎだ。遅れのコストが、少し間違うコストを、こっそり追い越してしまっている。アンディ・ジャシーは『Harvard Business Review』に書いて、なぜ速さそれ自体がリーダーシップの選択なのかについて、同じことを述べている。たいていの場合、もう少し意見を集めて、決めて、学びながら調整できる。そして、あらゆる一手の前に確実さを求めるチームは、ゆっくりと止まっていく。
だから、順番に、二つの問いを。これは取り消せるか?イエスなら、今決める。ノーなら、うまく選ぶのに必要なものの、だいたい七十パーセントを持っているか?イエスなら、それでも今決める。七十未満なら、答えを実際に変えるであろう、二つか三つの具体的な事実に名前をつけ、それだけを取りに行き、そして何があろうと決める時刻を決める。「木曜までに答えを出す」は、「準備ができたと感じたら」に勝る。なぜなら、ストレスの下では、あなたは決して準備ができたとは感じないからだ。
決めているあいだ、ストレスがあなたにしていること
ここが、ほとんどの決断アドバイスが飛ばす部分だ。こうした判断がいちばん大事になる瞬間は、たいてい、それを下すのにいちばん備えのない瞬間だ。なぜなら、ストレスは脳の決め方を変えるからだ。しかも、よいほうへではなく。
あふれているとき、じっくり天秤にかける思考の部分は静かになり、速くて自動的な部分が引き継ぐ。それは設計どおり。道から飛びのく必要があるなら、すばらしい。でも、業者を選んでいたり、デリケートなメッセージの言葉を選んでいたりするなら、問題だ。ストレス下の意思決定を研究する人たちは、一貫したパターンを見いだしている。急性のストレスは、人を習慣のほうへ、しなやかで目標に向かう思考から遠ざかるほうへ、そっと押す。あなたは、なじみのある一手、初期設定、いつもやることへ逆戻りする。目の前の状況が何か新しいものを求めているときでさえ。ストレスはまた、リスクと報酬の読み方も曲げる。しかもよく、内側からは気づけないやり方で。
そのどれも、あなたが壊れているという意味ではない。ストレス下の脳は、落ち着いた脳とはちがう楽器だ、ということだ。そして、パイロットが天候を勘定に入れるように、あなたもそれを勘定に入れるべきなのだ。
実用版は、短い。
- 取り消せるなら、ストレス下のあなたの脳でも大丈夫だ。どのみち速さが正しい判断だし、取り消せる速い決断は、定義からして、賭け金が低い。ここでは速いシステムを信じよう。それはこのために作られている。
- 取り消せないなら、活性化しているあいだは決めない。まず身体を下げよう。ゆっくり何度か吐いて、短い散歩、水、本物の休憩。それからもう一度見る。あなたは引き延ばしているのではない。本当の判断力がオンラインに戻ってくるのを待っているのだ。
- ストレスを抱えているときは、明白な答えを疑う。選択が強いられたように感じて、見える唯一の選択肢がいつものものなら、それはたいてい、状況ではなく習慣が話している。コミットする前に、ひとつの代替案に自分で名前をつけさせよう。
誰を、いつ巻き込むか
速さとゆっくりさは、時間だけの話ではない。何人を引き入れるかの話でもある。そしてここでも、同じ理屈が成り立つ。両開きの扉に、会議はめったにいらない。安く取り消せるなら、五人に意見を求めることは、たいてい遅れと、自分自身の判断の薄まった版を買うだけだ。自分で決め、決めたことを人に伝え、先へ進もう。取り消せる判断の要点はまさに、間違うコストが低いことだ。だから、全員に相談するコストは、払う価値がない。
片開きの扉こそ、ほかの人がテーブルの席を勝ち取る場所だ。必ずしも投票するためではなく、あなたに見えないものを見るために。大きな決断に近づいていて、少しストレスを抱えているとき、あなた自身の死角はいちばん大きくなる。そして正しい二人目とは、安心させることより、居心地の悪いことを言ってくれる人だ。わざと選ぼう。この種の判断を前にしたことがある人、結果とともに生きていくことになる人、あるいは単に、あなたに最も感心していない同僚を。具体的な問いを尋ねよう。肩をすくめを招く「どう思う?」ではなく、「これがまずくいくには、何が本当でなければならないか」を。その問いは、まだ何かできるうちに、リスクを表に引き出してくれる。
もう一方の側にも、静かなわながある。意見を集めることは、決めるのを避けるやり方、つまり立派に見える引き延ばしの一形態になりうる。四人目のアドバイザーにかかっていてまだ近づいていない、と気づいたら、たぶんもう答えは出ていて、許可を探しているのだ。事実に設けたのと同じ種類のゴールラインを設けよう。よい会話を二つ、それから決める。
必要になる前に、習慣を作る
プレッシャーの下でもちこたえるほとんどのことと同じく、これは落ち着いた状況での反復で楽になる。助けになる、いくつか。
自分自身の初期設定への感覚を、いつも持っておこう。わたしたちのほとんどは、どちらかに傾いている。それを抱えている居心地の悪さから逃げるために、大きな判断を急いでしまうか、それとも、もともと値しなかった小さなものに苦しんでしまうか。自分の傾きを知ることが、それを補正させてくれる。あなたが反すうする人なら、あなたのルールは「締め切りを設けて、それを守る」。あなたが当てずっぽうで撃つ人なら、あなたのは「片開きの扉に名前をつけて、それにはゆっくりする」。
決断の締め切りを、声に出して設けよう。同僚に「金曜までに決める」と告げることは、ぼんやりした心配を、有限のタスクに変える。そしてそれは、決めることを実際より悪く感じさせる、終わりのない恐れから、あなたを守ってくれる。
大きな判断のときは、それを書き留めよう。何を決めたか、そのとき何を知っていたか、何が起きると予想したか、数文で。あとで自分を採点するためではない。悪い結果と悪い決断を切り分けるためだ。よい決断が、ときに悪く転ぶことはあるし、間違った教訓を学んで、あらゆる一手を二度疑いはじめたくはないからだ。
そして、チームメイトに与えるのと同じ思いやりを、自分にも与えよう。あなたはこのいくつかを間違える。取り消せるものは、ただ正せばいい。取り消せないものは、そもそもあなたがゆっくりした理由だ。そしてそこでさえ、うまくいかなかった思慮深い判断は、道徳上の失敗ではない。それは、そもそも決断を下す人であることの、コストなのだ。
その重みが、ひとつの方法では抱えきれないとき
難しい決断と、もう可能だと感じられなくなった決断とのあいだには、ちがいがある。選ぶことが、毎日恐れるものになってしまったなら、もう下した判断を再生しながら眠れずに横たわっているなら、その優柔不断が仕事を越えて何もかもに忍び込み、たいていの時間かたまっていると感じるなら、それは、生産性の問題以上のものとして扱う価値がある。続く、麻痺させるような優柔不断は、不安やうつと連れ立っていることがあり、それらはケアに応える。セラピストや、あなたの医師が助けになるし、手を伸ばすことは、弱い一手ではなく、強い一手だ。あなたをプレッシャーの下で有能にする、その同じ安定を、あなた自身の中でも守る価値がある。
でも、たいていの日は、直し方は感じるより小さい。これは取り消せるか、と尋ねる。取り消せるなら、今決める。取り消せないなら、だいたい十分なところまで来て、身体を落ち着けて、それでも選ぶ。決断は軽くならない。あなたが、それを運ぶのが上手くなるのだ。
出典
- Harvard Business Review, Speed Is a Leadership Decision
- Harvard Business Review, Make Good Decisions Faster
- Anthony J. Porcelli & Mauricio R. Delgado, Stress and Decision Making: Effects on Valuation, Learning, and Risk-taking (Current Opinion in Behavioral Sciences)
- Farnam Street, Reversible and Irreversible Decisions